捕物出版blog

捕物出版のブログです。

時代劇専門チャンネルで捕物出版の広告を放映します

 10月の末のこと、時代劇専門チャンネルで「新吾十番勝負」を放映することに気づき、衝動的に思い立ったのが、捕物出版の「新吾十番勝負」の本のTVCMを出したいということでした。

 捕物出版は、この秋で創業5周年という事もあり、何かやってみたいと思ってはいたのです。

 ちょっとしたコネを頼って、時代劇専門チャンネル(日本映画放送)の営業担当者を紹介して貰いました。何しろ、テレビCMを出すことなど、今まで考えたことも無かったですから、右も左もわからない。でもYouTubeに動画をUPするのとは、さすがに勝手は違うだろうなあ?とは予想していました。

 日本映画放送の営業担当と話を始めてみると、まず出て来たのが「考査」という言葉。まあ、言ってみれば放送で広告を流しても大丈夫な相手なのか?ということなんでしょう。(たぶん)

 捕物出版は個人事業ですから、社会的な信用は何もないので、これは難関。相手の担当者も当然捕物出版なんて知らない。さて、どう説明しようかと思案したのですが、そこで思いついたのがPOD(プリントオンデマンド)という業態でした。PODは、普通の本のように出版社が本を作って在庫し、書店に販売委託をするというのではなく、注文の都度、本を印刷・製本するのは書店側の設備、受注生産と販売の責任は、品質責任、受発注や流通を含めて書店側にあります。つまり捕物出版は吹けば飛ぶような存在ではあっても、販売している書店、つまりお客様に向かい合うのは、Amazon楽天ブックス、honto、あるいは三省堂書店丸善ジュンク堂といった大手であるわけです。極端な話、個人事業者の私が病で倒れてしまっても、本は何事もなく販売され続けるわけです。

 このような説明をして局側の考査は無事通過。次はCM枠や、実際の広告素材に関することでした。

 時代劇専門チャンネルは、通常は広告放映時間の指定はできないとのことでしたが、新吾十番勝負の本ですから、新吾十番勝負の放映時間枠内でという当方の希望も受け入れて頂けました。新吾十番勝負は平日の12:30~13:00ですから、視聴者数は限定されるでしょうが、深夜、未明よりは良いかもしれません。

 次はいよいよ素材です。外注も考えて最初依頼もしたのですが、手直しも多そうな予感がしたので、動画制作ソフトを買い込み自作することにしました。ただ、もともと、視聴者層の中心が高齢者であることなどから、スライドショーに近いものを考えていて、動画部分は少ないのです。さらにナレーションはプロの方にお願いし、BGMは音楽素材のサイトで探して購入し、自分で編集することにしました。

 さすがに放送用の素材の扱いなので日本民間放送連盟規格という規格に準拠する必要があり、納入仕様も規定されているので、これは専門の制作会社に頼みました。19,000円也。その会社は、私のように広告代理店を通さないでCMを制作したいという相手の扱いに慣れていて、「まずは広告主コードを取ってくださいね」など懇切丁寧な指導。民放連規格に合致しているかどうかのチェックもしてくれます。その結果、放送局側の素材に関する考査も無事通過。12月上旬から中旬にかけて放映日も決まりました。

 具体的には平日12:30~13:00の「新吾十番勝負」の枠内で、放送日は12月1日(金)、12月5日(火)、12月7日(木)、12月14日(木)、12月18日(月)です。素材については最初のCMが放送されたあと、12月1日の14:00にYouTubeでも公開します。

 ところで、大昔の「週刊新潮は明日発売されます」とか、一時期の角川書店とかを除けば、本のCMなど、よほどのベストセラー本でなければ滅多に眼にすることはありません。なので、我ながら本のテレビCMは狂気の沙汰にも思うのです。

 ただ、媒体が時代劇専門チャンネルであることには強い興味を覚えました。おそらく時代劇専門チャンネルの視聴者層は高齢者が多く、あまりネット上を主体的に調べ回るという人々ではなさそうに思われます。なので、ネット書店販売が中心の捕物出版は、この人達にアプローチする手段が無い。しかし、57年前に制作された時代劇ドラマを視聴しようという人々と、捕物出版の本を読もうという人々の親和性は、他の媒体では期待できない「濃さ」であるようにも思われたのです。直接「新吾十番勝負」の本をお買い上げいただけなくとも、「捕物出版」の存在を知って頂けるだけでも、という思いを込めて素材は考えてみました。

 また、CS放送ペイチャンネルは、基本的に視聴料で賄っていますから、CM料金は相対的に安い。時代劇専門チャンネルの場合、30秒CMは1回3万円です。5回放送しても15万円、それでもおそらく経費に見合った広告効果は見込めないでしょうが、まあ、5年もたったし、一生に一度くらいトライしてもよいかな、と思ったわけです。

 時代劇専門チャンネルを実際に見てみると、自局の番組宣伝を除くと、大半はサプリメントなどのCM、しかも2分、3分といった長尺が多い。見た限りでは「オーディオ機器買取」の広告以外には30秒CMはありませんでした。こういう中での捕物出版のCM、さぞかし浮くだろうとは思うのですが、逆に言えば視聴者の方々にインパクトはあるかもしれません。
 広告効果がどの程度あったかは、また別途ご報告します。

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楠田稔「浜野晋介捕物控」を刊行しました

楠田稔氏の「浜野晋介捕物控」を刊行しました。2月20日発売です。

https://www.amazon.co.jp/dp/4909692770/

この作品は、幕末期の横浜開港場を舞台とした捕物小説で、地元紙の「神奈川新聞」に2年余り断続的に連載されたものです。ただし、著者の楠田稔氏は生没年なども不明で著作権継承者も分りませんでした。

そこで、この本は文化庁の裁定制度を利用して、印税相当額を法務局に供託して刊行したものです。

ところで、著作権者が不明で著作物使用料の支払先がわからない場合の対処方法として、文化庁では「裁定制度」を用意しています。供託すべき金額を金額を裁定し、供託金の支払いを確認したうえで出版を認めるという制度です。

ところが、著作権法で定められている裁定制度によらず、言い換えれば、著作権上に定められた正規の手続きを無視して出版されている本は、驚くほど多いのが実態です。

よく、昔の短編を集めたアンソロジーなどに「著作権継承者の方。ご消息を御存知の方は、編集部までご連絡願います」といった文章が巻末に載っている場合があります。これは「連絡いただければ著作権料を支払う意思がある」という意味の文章ですが、逆に言えば、連絡が無ければ誰にも著作権料を支払っていないということです。

この方法は著作権上の規定に準じたものではありません。著作権法では、裁定された著作権料を供託、つまり先に払ったあとで、刊行を認めるのであって、不払い、後払いを認めていないわけです。正規の裁定制度を経た本であれば「著作権法第67条の2第1項の規定の適用を受けて作成された複製物です。(平成x年x月x日裁定申請)というような文を記載することが義務付けられています。そのつもりでご覧になると、いかに裁定制度を経ずに刊行されている本が多いかということがお分かりになると思います。

ただし、私は、中小の出版社が、アンソロジーや雑誌の復刻版を出す場合に、裁定制度は必須だとも申しませんし、著作権法を無視した脱法行為として非難するという立場でもありません。賛同も奨励もしませんが非難はしません。

裁定の手続きはかなり煩瑣であったため(近年はだいぶ簡素化されましたが)なかなか利用できないという面がありました。その背景もあって「著作権者を探しています」という文面だけで出版を強行する本が増えて、いつの間にか広く出版業界に定着してしまったのです。ですから中小の出版社に対してとやかく物申すつもりはありません。

ところが、大手でもK社やT書店のように無視している例があります。私の様な個人事業でも裁定手続きができるのですから、社員の大勢いる大手出版社なら、その作業ができない筈がありません。

大手では中央公論社がきちんと裁定制度を利用していることが判りますが、著作権の権利者探しの広告や裁定実績を見ても、中央公論社以外の大手出版社をほとんど見かけないのが実態です。(もちろん、著作権者不明の物には一切手を出していないという所も多いでしょう。)

では、なぜ捕物出版では、このような業界慣行にもかかわらず、裁定制度を守るのかということですが、吹けば飛ぶような個人事業で、社会的信用もないわけですから、「後払い」の記述は空手形にもなりかねないという不信感を抱かれても仕方がなく、さらには「好き勝手なことをやっている」と指弾されるかもしれません。ですから、私自身は後ろ指をさされないよう、裁定制度を遵守します。

ただし、少なくとも社員が何百人もいる様な大手出版社が脱法行為を続けているのには憤りを感じていますが、中小出版社にまで、その負担を強いようとまでは思っていません。

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著作権継承者の方を探しています

捕物出版では下記の作品の刊行を企画しており、著作権継承者の方を探しています。お心当たりのある方はぜひご一報願います。
九鬼紫郎 稲妻左近捕物帖、森達二郎 相良一平捕物帳、島本春雄 振袖小姓捕物控、谷屋 充 田町の玉吉捕物帳、三好一光 清吉捕物帖、北園孝吉 花牧竜之介捕物帖、小島健三 満四郎捕物帳、阪東逸平 大江戸捕物秘帖、根岸 寛 大和屋お銀捕物帖、村田芳邦 素浪人捕物秘帖、小諸文平 小紋次捕物新双紙、日下紅一郎 俵屋およね捕物秘帖、杉山鏡史 怪奇捕物蛇姫変化、野村欽堂 喧嘩小僧捕物帳、楠田 稔 浜野晋介捕物控、須磨利之 並木行夫「黄金呪縛」の表紙画

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捕物小説を書いてみたい、出版したいという作家の皆様へ

近年は中間小説誌も減り、ましてや捕物小説はほとんど発表の場が無いのでは?とも思われる状況となっています。

さらに出版界は冒険をしなくなっていますから、売れている作家さんの本は次々に出しても、そうでなければ重版未定のまま放置されます。新人の作品発表の機会も少ないでしょう。

弊社はこれまで主に昭和に発表されたまま、近年は絶版状態になっている作品を掘り起こして刊行してまいりましたが、これに加えて、今年からは、新作、あるいは近作で絶版状態の作品にも門戸を開こうと考えました。発表の場が見つからずに思い悩んでいる作家の皆さん、是非、お問い合わせください。

1.作品の時代背景は明治初期以前とします。時代考証は十分にご配慮ください。基本的には「捕物」がテーマですが、主人公は御用聞きには限定しません。ジャンル的には時代ミステリーに近いものでも可とします。

2.翻案小説も可としますが、原作は著作権が切れている古典的な作品としてください。

3.近年出版されて重版未定となっている本の出版を望まれる作家様の場合には、当該書籍の出版権契約をクリアしていただく必要がございます。

4.応募作品の出版を確約するものではございません。内容を拝読し、数名の書評家の方などの御意見などを参考にした上で、出版の採否を決定させていただきます。

5.短編連作、長編の別は問いませんが、単行本として刊行することから、おおむね400字詰め原稿用紙換算で500枚以上800枚以下を目処としていただきたく存じます。

6.出版権は設定いたしません。著作物使用許可契約となります。著作物使用料は書籍の税込定価の10%とします。なお、プリント・オン・デマンドの出版形態のため、電子書籍と同様に出版部数の事前の設定はございません。販売高に応じた半期ごとの著作物使用料のお支払いとなります。

7.出版形態はA5判、ソフトカバーで、Amazon楽天ブックス、hontoの通信販売と、全国の三省堂書店丸善ジュンク堂書店店頭での注文・取り寄せとなります。

8.原稿はwordで清書したデジタルデータでお送りください。なお、近年出版されて重版未定となっている本の復版に関しましては、書籍名をご連絡ください。

捕物出版 mail@torimono.jp

 

日本経済新聞電子版で紹介されました

横溝正史著「朝顔金太捕物帳」など3冊が日本経済新聞電子版で紹介されました。この3冊は挿絵入りだったこともあり、挿絵の著作権処理や文化庁の裁定処理の準備などもあって、本づくりは大変だったのですが、苦労した甲斐がありました。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52959200U9A201C1BC8000/

今朝の産経新聞に捕物出版が紹介されました

今朝の産経新聞、文化欄に「オンデマンド書籍急成長」という記事が掲載され、その中で捕物出版の事が紹介されました。

なお、ネット上ではすでに12月2日に「似顔絵や捕物帳、学術書…利用広がるオンデマンド書籍」という表題で配信されています。

https://www.sankei.com/life/news/191202/lif1912020017-n1.html

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初めての裁定処理が一段落しました

11月25日に発売予定の横溝正史「不知火捕物双紙」には、昭和12年の講談雑誌に初出時の伊東顕氏の挿絵を用いています。
ところが伊東顕氏は生没年さえも判らず、著作権継承者も不明でした。そこで文化庁の裁定制度を経て、挿絵を掲載することにしました。
9月の中旬から準備を始めて、著作権情報センターに「権利者探し」の広告を掲載したのは9月21日、それから文化庁の担当官とのやりとりが始まりました。親切に応対してくださるのですが、文化庁側の事務のマニュアル化が遅れているためか、何しろ手戻りが多い、後追いで関連団体などへの確認作業などが次々にやってくる他、提出資料の例示がないので、試行錯誤で提出資料を作れば、手直しが入る、といった作業が延々と続くのです。
最後の最後は、裁定結果がOKとなった通知の中で「なお、著作権法第67条の2第2項では、同条第1項の規定により作成した著作物の複製物には、同項の規定を受けて作成された複製物である旨及び裁定の申請をした年月日を表示されていることとされていますので、著作物の利用の際にはそれらを表示し、参考となる資料を係宛てに提出してください」と書いてあるのです。「またかよ!」と頭がクラクラしました。
 11月25日の発売ですから印刷原稿はもうAmazonにわたっています。その出稿してしまった印刷原稿のPDFを手直しする羽目になったことは言うまでもありません。
 何から何までこんな感じで、すべて後先が逆で、泥縄式の対策が生じるのです。際限なく無駄な仕事が発生する状態を、何の工夫もなく連綿と続けている役人たちの姿が目に浮かぶのです。
 11月22日には横浜地方法務局に、文化庁から指定された供託金の払い込みに行ってきました。ここでも、供託金13,976円の支払いの段になって「ぴったりでないと、お釣りは出せませんよ」と言われて、郵便局まで行って少額切手を買ってお金を崩して出直してくる羽目になりましたが、こんなのはもう慣れっこになっていて、もはや苦痛にも感じない自分が怖いくらいです。
 ともあれ、とりあえず、11月25日の発売を迎えるための準備は完了したわけです。
 もっとも裁定処理は事務方の処理で事実上終わっているのですが、最終的には有識者による審議会で裁定が下されるので、裁定の正式結果が来るのは12月半ば以降になるようです。
 次は、島本春雄「振袖小姓捕物控」の刊行に向けた裁定処理の準備に入ります。

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文化庁長官名義の担保金決定通知