捕物出版blog

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初めての裁定処理が一段落しました

11月25日に発売予定の横溝正史「不知火捕物双紙」には、昭和12年の講談雑誌に初出時の伊東顕氏の挿絵を用いています。
ところが伊東顕氏は生没年さえも判らず、著作権継承者も不明でした。そこで文化庁の裁定制度を経て、挿絵を掲載することにしました。
9月の中旬から準備を始めて、著作権情報センターに「権利者探し」の広告を掲載したのは9月21日、それから文化庁の担当官とのやりとりが始まりました。親切に応対してくださるのですが、文化庁側の事務のマニュアル化が遅れているためか、何しろ手戻りが多い、後追いで関連団体などへの確認作業などが次々にやってくる他、提出資料の例示がないので、試行錯誤で提出資料を作れば、手直しが入る、といった作業が延々と続くのです。
最後の最後は、裁定結果がOKとなった通知の中で「なお、著作権法第67条の2第2項では、同条第1項の規定により作成した著作物の複製物には、同項の規定を受けて作成された複製物である旨及び裁定の申請をした年月日を表示されていることとされていますので、著作物の利用の際にはそれらを表示し、参考となる資料を係宛てに提出してください」と書いてあるのです。「またかよ!」と頭がクラクラしました。
 11月25日の発売ですから印刷原稿はもうAmazonにわたっています。その出稿してしまった印刷原稿のPDFを手直しする羽目になったことは言うまでもありません。
 何から何までこんな感じで、すべて後先が逆で、泥縄式の対策が生じるのです。際限なく無駄な仕事が発生する状態を、何の工夫もなく連綿と続けている役人たちの姿が目に浮かぶのです。
 11月22日には横浜地方法務局に、文化庁から指定された供託金の払い込みに行ってきました。ここでも、供託金13,976円の支払いの段になって「ぴったりでないと、お釣りは出せませんよ」と言われて、郵便局まで行って少額切手を買ってお金を崩して出直してくる羽目になりましたが、こんなのはもう慣れっこになっていて、もはや苦痛にも感じない自分が怖いくらいです。
 ともあれ、とりあえず、11月25日の発売を迎えるための準備は完了したわけです。
 もっとも裁定処理は事務方の処理で事実上終わっているのですが、最終的には有識者による審議会で裁定が下されるので、裁定の正式結果が来るのは12月半ば以降になるようです。
 次は、島本春雄「振袖小姓捕物控」の刊行に向けた裁定処理の準備に入ります。

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文化庁長官名義の担保金決定通知